昭和24年に創業され、冷間鍛造金型等の金型の設計・製造を
行ってこられた枚岡合金工具株式会社さま。
金型事業とは別に2003年からデジタルドルフィンズという
データ管理ソフトを開発され、販路開拓のため
多数の展示会に出展されてきました。
デジタルドルフィンズの誕生秘話から人垣ができるプレゼンの秘訣まで、
古芝保治会長と展示会のあゆみをたっぷりとお聞かせいただきました。

展示会との歩み

展示会に出すようになったのは2003年から。
ちょうど今から9年前。
デジタルドルフィンズが産声をあげたのが2003年の8月で、
一番最初に出たのは同年9月の中小企業家同友会の
天満橋OMMビルであったMONOMONO市でした。
その次が同年10月の関西機械要素技術展です。


2012年6月 設計・製造ソリューション展(東京ビッグサイト)

デジタル・ドルフィンズ誕生以前

――デジタルドルフィンズの販路開拓が展示会出展のきっかけだったのですね。
  このソフトが誕生するまでにはどのような経緯があったのでしょうか。

ターニングポイントとなったのはコンピュータとの出会い。
1983年です。
当時、会社で非常勤の経理の担当者を月5万円でお願いしていました。
週に2~3回来ていただいて、帳面をつけていただいていましたが、
その方が血圧300で突然リタイヤーしてしまわれました。

親父の友人に当時コンピュータ会計をやってるところがあって、見せてもらう機会がありました。
月5万円のリースを組んでもらってコンピュータのほうに行くか、
再雇用をするか、という明暗二筋道の選択に迫られ、
これからはこういう時代が来るのだ、と思い、
コンピュータの方に行こう、ということになりました。
そういう経緯があり、1983年の4月にコンピュータが入ってきました。

コンピュータを入れたことが一つの転機になり、
会社のいろんなものを作るようになりました。
最初は売上管理のプログラムを作っていただいてそれを解体しました。
プログラムを全部ノートに書いたんですよ。
そしたら構文が分かってきたんです。
if~then~というふうに、条件分岐式が分かってきて、
じゃあ、これで仕入管理が出来ると。
売上に対して仕入。
売掛金に対して買掛金。
集金予定表に対して支払予定表。
まったく逆のことを作ったらいいだけのことじゃないですか。
解体して逆の同じことを作ったらできてしまった。

それが出来上がるとプログラムを作ることがおもしろくなってきて、
受注管理、給料計算、年末調整、確定申告、全部作っていくんですよ。

人がやることを、もう1回同じことをやるのは無駄と私は思ってたんですよ。
もう1回やる、っていうのは全部機械化すればいい。
基本的にそもそもの考え方はそこです。
伝票などは1回登録してしまえばさっと出せる、
それがコンピュータの魅力。
一つのデータをいろいろ使いまわしできるんですね。

3S活動の延長線上にデジタルドルフィンズ誕生

――なるほど。いろいろと腑に落ちました。
  もともとそういう思考の素地を持っていらしたから、
  3S(整理・整頓・清掃)が持つ力にもいち早く気付かれたのですね。

※3Sについては詳しくはコチラ>>

古芝会長の著書『儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場の秘密』

そうです。
だからその3S活動の延長線上に
つまり、「要る情報が、いつでも 誰でも すぐに(6秒以内)に取り出せる」
情報の3Sの延長線上にデジタルドルフィンズっていうのは生まれてくるわけですね。

場所の3Sをやって、
その次はモノの3Sをやって、
それから情報の3Sをしようってなって、
情報の3Sをやる中でイノベーション(情報共有)をやりましょう、
ということで取り組んで。

取り組むキッカケになったのは松下電器さんが工場見学に来られた際の言葉ですね。
うちのデータ管理のやり方を見られて、これを世に出したらどうや、と。
それから特許出願をして、それから経営革新支援法の認定をいただくんですね。
さらに経営革新支援法で補助金の交付決定をいただいたのが
2003年の4月だったんですよ。
その交付決定をいただいた予算で展示会に出展していくんです。

だから経営革新支援法とか3S活動とかと不可分の関係にあるわけです。
枚岡合金にとってはじめて展示会に出展していく、っていうきっかけになったのは。
もしそういう支援策がなければ
展示会っていうのは思いつかなかったと思いますね。
経営革新支援法の中に展示会、販路開拓、っていうテーマがありますから。

最初の出展にいたるまで

当時、デジタルドルフィンズっていう名前が決まっていなかったんです。
秋に展示会に出展することは決まっていたから、
会社で3m×2.7mのブースを実際に作りました。
デザイナーさんを通じて、展示を担当している会社の方が提案をしてきたんですね。

一番最初のデジタルドルフィンズのユーザーさんは
ヨットマンだったのでその方に喜んでいただこうと、
海と風っていうのをテーマにしました。

そのテーマに沿って、提案を8月の下旬に出されるんですね。
そしたらヨットのラダー(ハンドル)を持ってきたりとか、ビアダルを持ってきたりとか、
椰子の木の電飾をもってきたりしてまるでショットバー!
私はもう落胆したんですよ。これはイメージと違う!

これはアカンと思って盆休みに東急ハンズ心斎橋店に行きました。
たまたま地下1階にドルフィンの風船が悠然と泳いでたんです。
これだ! と思ったんです。そのときに「デジタルドルフィンズ」の
ネーミングがひらめきました。
飛んで帰って特許庁の電子図書館で商標登録を検索したんです。
“ドルフィン”はあるわあるわ百以上の登録商標が出てきたのですが、
その中で偶然「デジタルドルフィン」は登録がなかったのですね。
これでいこうと決めて、商標登録もしました。

デジタルドルフィンズという名前が決まって、
海のブルーっていうテーマカラーも決まっていくんです。

それからデザインを全部やり変えたんです。
プロジェクターと80インチのスクリーンを用意して
天井から映すという試みをやりました。

だから最初は販路開拓費として展示会出展で300万くらい使ったかな。

デジタルドルフィンズっていうネーミングが出来たことによって、
コンセプトが全部決まっていったんです。
イルカだから癒し系のソフトにしよう、と。
電飾の椰子のままだとギンギラギンのソフトだったかもしれないですよ(笑)。
デジタルドルフィンズという名前がついて、
はじめて使う人が癒されるソフトウェアに変わってきました。
ネーミングはものすごく大事ですね。

さらにデザイン面でも政府のHPを作ったデザイナーさんとコラボ(協業)して、
細部にいたるまでデザインコンセプトなど決めました。
最初に作ってもらったロゴを今も使っています。

新事業と展示会出展

――世に出されてからはどうでしたか

最初の10社に到達するまで丸2年かかりましたが、
その間、展示会には出し続けました。
関西機械要素技術展に2年出して、
その後は同時開催の関西設計・製造ソリューション展に出すようになり
東京の設計・製造ソリューション展にも出るようになりました。
ここ数年は東京と大阪の中小企業総合展にも出るようになってきました。  

最初は売ろうという意識よりも文化祭のノリでしたね(笑)
顧客重視よりも自分たちが作ったものを世に問うために展示会に出していました。
販売目標もなかった。

それが徐々に変わってきたのは今から5年半前になるんですけど、
パナソニックさんが展示会に来られるんですね。
同社にデジタルドルフィンズが入るまで紆余曲折があり11ヶ月かりました。

入ってからが大変でさらに開発の連続だったんです。
ここをこう変えてほしいとのご要望が大量にあって、
私ところがご要望にそって改良して、というのを繰り返しで
開発が進んでいきました。

他社さんでもそういう経験をさせていただく中で、
デジタルドルフィンズっていうのは
イノベーションを売っている、ということに我々気がつくんですよ。
デジタルドルフィンズを活用することによって
お客さんがいかに場所の無駄とか時間の無駄とか、っていうのをなくしていってるか。
そういうイノベーションを提供している、ってことに気付くんですね。


デジタルドルフィンズ カタログから

それから展示会の展示のあり方、っていうのが、変わっていくんです。
最初立ち上がったときは
金型事業部とデジタルドルフィンズ事業部って言ってたんです。モノを売るから。
途中から3S経営革新事業部っていう名前に変えたんです。
ここに書いているように、経営革新っていうカルチャーを売っていく。
いかに便利さ時間創造を売っていくか、っていうことに切り替わっていきました。
おかげさまでいまでは導入企業は100社を超えました。

プレゼンテーションの秘訣

――古芝さんの展示会を見学させていただいて、
  とても印象に残っているのがプレゼンテーションです。
  2012年春の中小企業総合展では古芝さんが話し始めると
  通路を歩いている人たちが立ち止まり、二重の人垣ができていました。


2012年5月 中小企業総合展(インテックス大阪)

プレゼンは波動っていうのがあって、
聴いている人、歩いている人はイルカさんのように電波を出している、
そういうのをキャッチして増幅して返してあげる、ってことだと思います。
皆さん課題を持って展示会に来られていると思うんですね。
会社で悩みがあってそれをなんとかしたい。
悩みを解決したくて情報収集に来られてますよね。
そんな人たちにどんな言葉が響くか、良くなって頂きたいとの想いを
意識してプレゼンテーションをしています。


2012年5月 中小企業総合展(インテックス大阪)

それとやっぱり明るさ、元気さがすごく大事。
どんなにいいものでもしぐさや表情で決まってしまうものってあるじゃないですか。
聞いてくれた人が聞いて良かったな、自分のところでも試してみよう、
デジタルドルフィンズじゃなくても3Sのノウハウなんかでも
使えば必ず効果は出てくるから。
そういうことを心がけていますね。

アドバイス

やはり一番大事なのは志だと思います。
人の役に立つ商品だと自信を持って世の中に発信していくこと。
宇宙の真理に反しない限り、事業というのは成功するように
必ずなっているんですね。

自分のやってるビジネスがお客さんの役に立っているということに
重点を置くこと。
いかに売るかではなく、いかに役立つか、という視点で
お客さんのお困りごとに支援、お手伝いをさせていただく視点に立てば
道は開けてくる。助けるものは助けられる。
いかに人をお助けするか、ということに徹するか
そういう熱き志というものがすごく重要ですね。

目先の利益だけではなく、長いスパンで見ていく必要がある。
その間にはいろんな困難に出会いますが、
困難に出会ったときに志があれば乗り越えていくことができます。

インタビューを終えて

今回の古芝会長のインタビューは、展示会を切り口にした第二創業のお話となりました。
多くの二代目以降の経営者や後継者はどこかで
「先代が作ってきたものを大切にしながら、自分の強みを活かした事業を起こしたい」
という気持ちがあるのではないでしょうか。
それを見事に成し遂げられた古芝会長の姿は多くの若い世代の希望だと思います。
迷ったら掃除!
古芝会長、お忙しいところご協力ありがとうございました。

【枚岡合金工具 会社情報】

会社名 枚岡合金工具株式会社
お問い合わせ 06-6758-20017
ホームページ 枚岡合金工具株式会社(金型)
http://www.sg-loy.co.jp/
デジタルドルフィンズ
http://www.digitaldolphins.jp/
5S活動と3S活動の手引き
http://www.sg-loy.com/

ブログ 古芝会長のブログ(経営者会報ブログ)
http://hiraoka.keikai.topblog.jp/
所在地 大阪市生野区巽中2-7-22

【これまでに出展した主な展示会】
設計・製造ソリューション展
関西設計・製造ソリューション展
機械要素技術展
中小企業総合展
神戸国際フロンティア産業メッセ
JIMTOF 2010 第25回日本国際工作機械見本市
ほか

今後の展示会出展予定情報はこちら>>