私が「戦争用語」を使わない理由

おはようございます^^
自社の問題解決力を見える化し展示会を成功に導く、展示会活用アドバイザーの大島節子です。

あじさいが咲き始めていますね。2週間後くらいが見ごろでしょうか。そんな早朝の大阪から今朝も展活タイムズをお届けします。

ビジネスと戦争用語

今から10年と少し前から私自身が書く文章やセミナーでお話しする際に、「この言葉は使わない」と意識的に決めている一群の言葉があります。 それは、いわゆる戦争用語や、戦いを連想させる言葉たちです。

「え、ビジネスの話で戦争用語?」と思われるかもしれません。 でも、ちょっと周りを見渡してみてください。ビジネスシーンは、実はそうした言葉で溢れていることに気づくはずです。

ビジネスシーンは「戦争用語」でいっぱい?

例えば…

  • 戦略、戦術: これはもう、語源からして軍事用語の代表格ですよね。
  • ターゲット: 英語の「target」は、まさに「標的」を意味します。
  • 競合(他社): 「競争相手」であり、時には「打ち負かすべき敵」のようなニュアンスで使われることも。
  • 市場攻略、シェア獲得(奪取): 新しい市場を「攻め落とす」、他社のシェアを「奪い取る」といった、まさに陣取り合戦のようなイメージ。
  • 価格戦争、業界戦争: 言葉そのものが、激しい戦いを表しています。

他にも、「最前線」「一点突破」…探せばもっとたくさん出てきそうです。 これらの言葉を使う時、私たちは無意識のうちに、ビジネスを「勝ち負け」や「敵と味方」といった、どこか攻撃的な構図で捉えてしまってはいないでしょうか?

2011年の震災と、3人の師の教え

私が、こうしたビジネスにおける「言葉遣い」について、より深く、そして真剣に考えるようになったのは、今から十数年前、2011年の東日本大震災の後くらいからでした。

あの大きな、そして悲しい出来事を経て、人との繋がりの尊さ、言葉が持つ力、そして「自分は何のために仕事をするのだろう?」といったことを、根本から見つめ直す機会だったように思います。 私がこの考えに至る過程には3人の「師」の存在がありました。

  • 森本繁生さん(ネットショップの師匠): うりうり教習所の講師と受講生として出会い、ネットショップ運営のイロハを教えてくださった森本さん。「全ての対立は解消できる」という言葉は衝撃的でした。ビジネスは常に誰かと誰かの利害がぶつかり合うものだと思っていた私にとって、それは「敵」と「味方」ではなく、「共に解決策を見出すパートナー」という視点があることを知りました。
  • 村上肇さん(ウェブと製造業の師匠):展活の誕生をサポートしてくださった産婆さんのような存在(笑)。 「戦わない経営」そしてそこから発展して生まれた「無敵教」の教え。価格競争やシェア争いといった「戦い」の土俵に降りるのではなく、自社の独自の価値を磨き上げ、お客様から「あなただからお願いしたい」と選ばれることの重要性。そしてそれこそが真の「無敵」であると知りました。
  • 立石剛さん(講師の師匠): 講師としての心構えや在り方を教えてくださった立石さん。「セミナーで大切なのは愛。愛の反対語は恐れ」という教えは、私の活動の根幹を成す言葉です。人に何かを伝える時、知識やテクニックをひけらかしたり、相手をコントロールしようとしたりするのではなく、心からの「愛(=相手の成功を願う気持ち)」を持って接し、安心感と信頼感を与えることの大切さ。これは、展示会での接客や情報発信など、あらゆるビジネスコミュニケーションに通じる金言だと感じています。

これらの師の言葉の一つひとつが、私の心に深く染み渡り、ビジネスにおける言葉選び、そしてスタンスそのものを見直す大きな指針となっていったのです。

「勝つため」ではなく「みんなが笑顔になるため」

師匠たちからの影響、そして震災を通じて感じたことから、私の中で一つの想いが固まりました。 それは、「私がビジネスを通じて目指しているのは、誰かを打ち負かして『勝つ』ことではない」ということです。

展示会活用アドバイザーとして、多くの企業のサポートをさせていただいていますが、その目的は、特定の企業だけが儲かれば良い、ということではありません。 出展社が展示会で素晴らしい成果を出し、その先にいるお客様が喜び、新しい技術やサービスが世に広まること。そこから関連する業界全体が活性化し、ひいては社会全体が少しでも豊かになる…。そんな「三方良し」ならぬ「全方良し」。関わる人みんなが笑顔になれるような、そんな世界の実現に少しでも貢献したい。それが私の願いです。

誰も負けなくていい、みんなで一緒に笑顔になれる。そんな世界がきっとあるはずだし、それこそが私たちが目指すべきビジネスの姿だと、私は思っています。

だから「戦争用語」を使いません

こうした想いがあるからこそ、私は自分の書く文章や話す言葉の中で、「戦争用語」を意識的に使わないと決めています。

言葉には、良くも悪くも力があります。そして、私たちが使う言葉は、無意識のうちに私たちの思考や行動を方向づけてしまうものです。 「戦う」「奪う」「攻略する」といった言葉を日常的に使っていると、知らず知らずのうちに、他者を「敵」と見なし、攻撃的な思考や行動に陥ってしまうのではないか…そんな風に感じるのです。

そのために、まずは自分自身が使う言葉から、意識的に選び、変えていきたいと思っています。

私なりの「言い換え」実践例

では、具体的にどんな風に言葉を言い換えているかというと…

例えば、マーケティングで当たり前のように使われる「ターゲット」という言葉。 私はこれを、「対象者」や「伝えたい人」、あるいは「届けたいお客様」といった言葉に置き換えるようにしています。 「この展示会で、どんな“伝えたい人”に、どんなメッセージを届けたいですか?」と問いかけると、不思議と、相手を「射止めるべき的」としてではなく、もっと温かい眼差しで捉えられるような気がするんです。

他にも、

  • 「戦略」→「計画」「方針」「取り組み方」
  • 「競合他社」→「市場の仲間」「同業の皆さん」「お客様にとっての他の選択肢」 といった具合です。

もちろん、ビジネスの世界には厳しい競争があることは承知しています。でも、言葉のニュアンスを少し変えるだけで、思考のベクトルが変わり、相手への向き合い方や、ビジネスそのものの捉え方が、少しずつ変わってくるように感じています。

まとめ:言葉は、私たちが創りたい未来を映す鏡

私たちが日常的に、そして何気なく使っている言葉。 それは、無意識のうちに、私たちの価値観や、私たちがどんな未来を創りたいと願っているのかを映し出す鏡なのかもしれません。

「ビジネスは厳しい競争だ」「勝たなければ意味がない」 そういった側面も、確かにあるのでしょう。 でも、だからといって、常に戦いの言葉を選び、相手を打ち負かすことばかりを考える必要はないのではないか、と私は思います。

どんな言葉を選び、どんな姿勢でビジネスに向き合っていくか。 それは、私たちがどんな社会を、どんな未来を、この手で創り上げていきたいか、ということにも深く繋がっているのではないでしょうか。

小さな一歩かもしれませんが、私はこれからも、できる限り温かく、前向きな言葉を選びながら、皆さんと一緒に笑顔になれるビジネスのあり方を目指していきたいと思っています。

今日もお読みいただきありがとうございます。

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大島 節子

展示会活用アドバイザー展活
1975年 大阪市生まれ。1998年家業マルワ什器入社。2001年、26歳のときに売上の95%以上を占める得意先が倒産する、という人生の試練を経験。連鎖倒産の危機を回避し家業を立て直す過程で多くの展示会現場に携わる。これまで関わってきた1000件を超える展示会経験を元に2012年展示会情報サイト「展活」を開設。2013年からは展示会セミナーの講師として活動開始。登壇回数300回以上、指導人数10,000人以上の実績。展示会初出展企業にも具体的でわかりやすい指導が好評を得ている。初の著書『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』好評発売中。
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